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2013年12月15日 (日)

from ideas to actions その9 "Goodbye"

12月も半ば。

本格的に寒い季節。
青空が見えて日が射しているからといって、陽気な気分で外に出てみると、見た目と違ってえらく寒い。

寒さが増すと、空気が澄んで、夏とは違う空の美しさがあったり、大気の固い存在感を知ったりする。

音もやはりそうで、固く鋭くなりがちだ。
寒さとともに丸みや伸びが無くなる。


ヨーロッパ、特に北欧の音楽が僕は大好きだと述べている(と思う)が、冷たさの中にほのかな明るさと暖かさがあることがその理由だ。

僕の生まれた土地が土地なだけに、端からのイメージでは随分と”祭り”に仕立て上げられているけれども、本来音楽を聞きながら踊ったり歌ったりは大の苦手であり、ステージでパフォーマンスする職業に就いていながら営業スマイルに至ってはhateの状態であるから、そりゃなかなか売れっ子になるわけもないし、お祭りバンド化している自分のスタイルと全く正反対の自分のグループは下手の横好きなのかもしれない。

喜びが溢れた時に笑う、そんな自然体のままで人前に立っているだけだ。
笑っている時は、自分では意識していないから、何らかの嬉しい出来事がステージ上で起っているのだろう。



静かな音楽が好きだ。
特に、耳を澄ましていないと聞き逃してしまうぐらいの、静謐に近い音楽が好きである。
虫の音すらもなくなる冬の夜は、自ら音を生み出さなければ、音になるものがこの世から無くなってしまったかのように錯覚する。

故郷の九州はそういう意味では、関東に比べればまだ暖かく、一年を通して何かしらの生き物が音を立てていたように思うが、それでも冬ともなると静かになったものだ。


ジャズが学びたいと言っても、所謂ブラックが突き進めたアメリカのものではなく、僕の場合はヨーロッパのそれであった。
そのせいか、音大に入りたての頃は結構莫迦にされた。
”ああいうのをやっててもうまくはならない”だとか、”かたちがはっきりしない、とりとめのない音楽”だとか。

ある日、某お店でやっていたの某有名奏者のセッションに参加して、その日の夜にそのまま箱バンに抜擢されたのだが、まぁ、無理解と嫌がらせの連続だった。
”ヨーロッパにジャズはない”という名言から始まり、”スウィングしない”だの、僕の使ってるシンバルの音が気に食わないと演奏中に手で止めるだの、掟破りの必殺技を繰り出してくる。

その辺が業界嫌いになった第一要因だった。


僕は日本人である。
アメリカ人ではないし、当然ヨーロッパ人でもない。
小さな時に祖母や母が歌っていた日本の子守唄を覚えている。
その記憶をたどり民族音楽研究の第一人者の小泉文夫さんのお弟子さんの所にまで押し掛けてお話を聞かせてもらったこともあるが、知れば知るほど妙に虚しくなった。

音楽は、そのとき聞こえたものが全てである。
いくら伝承されても、そのときに流れていた音楽はもう今はないのだ。

誤解されるかもしれないが、こっそりと演歌の仕事をしていた時も、”日本の心であるといいながら、出てくる音は日本のものではない”という違和感にほんとに苦悩した。

ある日、その考えは逆になる。
僕は日本にいながら、小さい頃から親しんだ音楽はほとんど日本のものではなかったからだ。


被災地に行った時に、地元の人が歌う相馬盆唄を聞いた。
お祭りの歌だが、静かだった。
決して名手が歌ったわけではないけど、素朴で、暖かい。


地元の活性化などといって、様々な民謡がいろんなかたちで演奏される時代だ。
それが好きとか嫌いとかは僕にとってはどうでもいいことだが、例えばそこで”ロック”だとかのジャンルを借用したなら、どんな文化に根ざした言葉や歌でも画一化されてしまうんじゃなかろうか。


”ジャズ”という言葉もそうだろう。
どう拡大したところで”スィング感”とほぼ同義になったイメージは消えない。
批評家の罪だ。
言葉を司る人間が、言葉を間違えている。



一人のドラム奏者にスポットを当てたところから始まる僕の音楽の旅は、僕の人生そのものだと思う。
残念ながら彼に会うことなく、今年彼は逝ってしまったけど、いつも”疑う”という勇気と、”創造する”という希望を与えてくれた。

芸術=人がらの神話を僕は全く信じないが、この人の存在が僕の良心をいつも引き止めていてくれたように思う。

ポ−ル・モチアン。

何度でも挑戦しようと思えるのは、今もこの人の音が届いているからである。
冬になると、空気が澄んで、ほんとによく聞こえる。
いつも以上によく聞こえるのだ、”お前の歌を歌うんだ”という声が。
自由の音が。


”ポールモチアンが好きで、社会人やめて音大でジャズ? それで、そっちで食っていきたいなんて、物好きだね。”

うるせーよ。



Bobo Stenson      Anders Jormin     Paul Motian
"Goodbye"
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