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2012年6月14日 (木)

from ideas to actions その5 "Guess at the Riddle"

じめじめの間の晴れ間である。
6月の割には急に冷え込み、また暑くなるという随分とおかしな気候になっている。

ここ数ヶ月、演奏活動も多いが、最近ようやくレギュラーに興したレコーディングエンジニアの仕事の依頼も多く、自分の好きな音楽を聴く暇がないと思っていたが、人ってのは慣れるもんで、ようやくそんな忙しい日々の中でも音楽を聴く時間を取れるようになってきた。

仕事とあわせると、つまりは一日中音楽ないし音を聞いていることになる。
そんな閉鎖的な空間の晴れ間がこのブログであったりもする訳だ。

発表こそしてはいないが、公にしている曲やアレンジの他にも、やっぱりノイズエクスペリエンタルも好きで、自分でこそこそ作ってはこそこそお蔵入りにしてるものがいくつもある。
そもそも、ノイズミュージックは僕にとって二面だか三面だか五面だか、それだけある顔や性格の一側面で、誰の考えも含まない自分だけのプライベート空間のような位置づけだ。

”公表するものはポップでありたい”という考えこそ僕の作家としてのプライドで哲学のようなものであるから、そういった下手するとダークサイドのようなノイズを表に出すことはないと思うが、しかし、そういった側面の研究や創作がなければポップに潜む毒はやはり培われなかっただろうと思う。

ストレートなものは、僕にとっては退屈だ。


そこで今回はこんなアルバム。


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デヴィッド・グラブスの”Guess at the Riddle”である。
ソリストとしてより、人によってはジム・オルークとのエクスペリメンタルデュオである”ガスタデルソル”の名義の方がご存知なのではなかろうか。

ガスタデルソルはエクスペリメンタルというだけあって実験的でもあるけれども、そんな実験的な音楽をまるでクラシック音楽のような深みをもたせたことに大きな意味のあるユニットであった。

が、今作”Guess at the Riddle”は、そんな実験的な音楽とはうってかわって、アメリカの広い大地を思わせるような自由で温かみのある音とポップな曲によってカラフルに彩られている。
周りを固める布陣も、マトモス、アダム・ピアース、キム・ヨーソイと僕の大好きな現代を代表する作家ばかりだ。

まさにこの作品の面白い点の一つはそこにある。
作家が1人に作家を中心に集まってるということだ。
グラブスのポップ感は彼らの手によって極限まで広がる。

このカラフルさは、彼が今までに作ってきたエクスペリメンタルミュージックによって培われたものだということも忘れてはいけないだろう。


ノイズは、正しく解釈すれば”日常にあふれる音”そのものである。
発信される音をエフェクトすることで疑似日常の音を作り出し、額縁に絵を飾るように日常の音を切り取り、暴き出す。

音を特殊化することこそ、グラブスの”ノイズ”であった。
そうやって培われた音はポップな音楽へと昇華される。


音楽は簡単なものではない。
コード理論やテクノロジーによって作られるものではない。
日々の実験、研鑽によって編みだされ、紡がれていく。
思いつきやその場のノリではなく、積み重ねられた哲学が結晶化したものだ。


グラブスの作品は、表裏一体となって、それを僕に示してくれる。


そう簡単にこの音楽は作れやしない。

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