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2012年5月 5日 (土)

from ideas to actions その3 "loveless"

気温があがると、不思議なことに世界の音がざわざわと聴こえる。
寒い時期、世界はたしかにもっと静かだ。

暖かくなるにつれて、きっとたくさんの生き物が動き出すからだろう。
やっぱりどんな生き物も、生きる音を発し、鼓動がしっかりとビートを刻むもののようだ。

やがてそれらの音は混じり合って巨大なノイズとなるが、なぜこのノイズは耳に優しく入ってくるのか?
それは間違いなく大きな音のはずであり、ものすごい力で空間を支配しているはずなのに。


ノイズという観点で音楽を聴くきっかけはある日突然訪れた。
いつどこでそれが興り、どういう経路を辿って市民権を得たのか、おそらく少しその当時の環境やカルチャーを調べればすぐに分かることであろうが、僕はあえて調べることをしなかった。

なぜなら、ノイズは偶発的に生み出される音の集合体であると、そういうロマンチシズムをいつまでも信じたいからだ。





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”万人が当たり前のように聴き、知らなきゃモグリだ”とかいうくだらない口上は垂れないことにする。

その上で、このmy bloody valentineの”loveless”は全くもってスタンダードなんかではないと断言しておく。
マスターピースなんかでもない。
これが歴史から消えようが、そもそもこの作品がなかろうが、断じてミッシングリンクなんかにはならない。

カンブリア紀の異形の生物の様な位置づけだ。
真の意味でこの作品に”フォロワー”はいない。
真似などできない。

だからこそ、この作品が真に芸術品であると僕は思っている。

そういうわけだから誰がつけたか知らないが、”シューゲイザー”なんていう莫迦な冠がとてつもなく気に入らない。
靴など見つめることはない。


この作品が見つめたものは、間違いなく未来につながる可能性だった。

これほどまでにストイックに純粋なノイズというXの要因をコントロールしようとした試しは過去に例を見ない。

マイルスデイヴィスが、ビッチェズブリューにおいて迫ったカオス的なノイズは、飽くまでも”ハーモニーの解体”に根ざしたものだった。
つまり、ノイズのコントロールとは根本的に発想が違う。


楽器を装置として考えたとき、人はその装置によって何を引き出すのか。

楽器は常に人に音を与える。
さらによりよくそれを鳴らすために”身体的訓練”という制約も、同時に人に与える。
が、人が楽器に対して違う可能性を見出したなら、、、。
そこからがノイズだ。
つまり統計的な考えから文字通り解放されて、分析不可能な、処理の施しようがない”ノイズ”になる。

こんな音楽の聴き方はそれまでやったことがなかった。

明らかにタブーのはずのものを、最大の魅力として使う。
それこそが新しい可能性だった。

かといってそれがメインではない。
核となるものはやはり珠玉のメロディーだ。

このアルバムの信奉者はとにかくたくさんいるようだ。
が、あえていうなら、これは”信奉”などするものではない。

これは”小さな部品”だ。
部品を憧れの対象にすることほど莫迦な話はない。

ここにはたくさんの部品が詰まっている。
僕はこの作品を解体することによってほんとに多くのアイディアを得たし、ときにはそれに抗うように全く違った観点からノイズを考えるきっかけにもなった。


光を当てるなら、ガラスケースに入れたままにしていてはいけない。

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コメント

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投稿: Leone Siciliani | 2012年5月24日 (木) 16時09分

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投稿: Olli Warelius | 2012年5月28日 (月) 21時53分

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