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2012年4月19日 (木)

絶対悪概論 

”光ある限り闇もまたある。
わしには見えるのだ。
再び何者かが闇から現れよう。
だがその時はお前は年老いて生きてはいまい。”


世代的に、知ってる人はたくさんいるだろう。
隠すこともない、ドラゴンクエストシリーズの最高傑作と名高い、3作目の最凶の魔王ゾーマの散り際の台詞である。

とにかく、悪い。
勇者の力及ばぬところでの復活を予言し、目に見えぬ未来に絶望を抱かせる。
勝利と平和の為に戦い、今ようやくそれを手に入れたばかりの勇者に、だ。


子どもだった僕にとっては、彼は生まれながらにしての悪であり、世界の支配の理由もわからず、とにかく理不尽なワルであった。

悪いということに意味などない。
彼らは”悪”というロールを背負って生まれることによって世界と繋がっている。
だから、その台詞には悟りがある。
”光りある限り闇もある”と。

様々な物語あれど、この光と闇の関係を物語において意識させたのは、このドラゴンクエスト3がはじめてだったのではないだろうか。


大人になるまでは分からなかったが、生まれながらにしての悪を司るキャラクターというのは至極魅力的だ。


”絶対悪”は角度を変えると”絶対正義”にも変わる。
光と闇の闘争におけるそれぞれの立場のあり方は、人種差別や宗教闘争と同じように、己のロールにしたがって動く世界の理を明確に示している。


たとえばスターウォーズにおける”ダース・シディアス”。
物語を通して、暗く重く影を落とし、自らは直接動くことは少なく、闇そのものを纏っている。
理不尽な力と理不尽な支配欲が、どうにも人を魅了する。


たとえばバットマンにおける”ジョーカー”。
行動の原動力が”正義に対する悪”。
アメコミの方では、彼の悪への芽生えがトラウマ的に描かれて入るが、映画を見る以上(おそらく意図的にカットされたのだろうが)、生まれながらにしての悪の役割を果たしている。
圧倒的に強く、知力も遥かに主人公を凌ぐ。


たとえばドラゴンボールにおける”フリーザ”。
宇宙最強の強さを持ち、それ故に支配をすることでしか世界と繋がれない。
アンバランスな存在でありながら、圧倒的な存在感と恐怖。


たとえばワンピースにおける”ホーディージョーンズ”。
人種差別の域を超え、一人種の滅亡の為だけのロールを背負い、己の死をもその目標の一部であるとする。
中身などない、理由などない、理解不能、理不尽な悪。


その他、”生まれながらにして悪”を背負うキャラクターがいるが、それらが総じて魅力的なのは”自我の芽生えを自爆装置として作動させる”ことにある。

圧倒的な力が、自我によってリミッターをかけられる。
自我はこの場合、人格ととらえればよいか。

野性的な無自我は、まさにマシンのように正確に悪として成立する。
が、自我の芽生えは”己の役割を知る”ことを強要する。

そこには苦悩があり、それは弱さになる。


勇者の剣によって敗れ、大魔王ゾーマは自らの死を自覚する。
”自分は敗れたのだ”と。
そこに妙な人間くささというか何というか、そういうものがにじみ出ていて、最強のライバルを失う寂しさを味わう。
ゾーマがいてこその冒険と挑戦だったのだ。


人は誰しも、”絶対悪”に憧れるのかもしれない。
強くなりたい、圧倒的でありたい、力でねじ伏せたい。


幻想が最強最悪の悪を生み出す。
それこそ想像力の限りを尽くして。

悪を完全なものにしようとするとき、それがいかに想像するのが難しいかを知る。
”悪とは何か”は、必ず裏側に”正義とは何か”を伴うからだ。


そういう生まれながらにして悪のキャラクターが最近はとんと減った。

昔はいいやつだったが、トラウマによって悪の道を歩む、ってな具合の、巷のニュースでありそうな、言ってしまえばよりリアルなものばかりが幅を利かせる。

悪も正義もない、つまりは哲学の消失。


僕らは幼き頃から、自然に哲学を叩き込まれていたのかもしれない。
漫画、ゲーム、映画、そういう楽しみの中から生きることの意味をすこしずつすこしずつ学んできたのだろう。


もう一度、読み返したり、やってみたりするといい。
ああ、ものを作る人たちは、自らのたくさんの夢と希望を僕らに託そうとしていたのか。
そんなことに今さら気がつく。

こんどは僕らがそれを生み出す時代だ。
つまらないなんていわせていてはまだまだ駄目だなぁ。

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