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2012年2月 5日 (日)

侘び、詫び

1月は行く、2月は逃げるという。

2月に入った。
活動は日に日に濃密になっていく。

おもにcubic starのことだが、この年度末に入ってくる忙しいときに、僕は活動のお知らせメールをみんなに送らねばならず、受信されている方々に大変な迷惑をおかけしていることをここでお詫びしておきたい。


営業というのは実に大変な作業だ。
たとえいいものを持っていたとしても、人に知られなければそれは人に必要とされず、知られるためにはそれをいらないと思っている人にまでお知らせしなければならず、それを繰り返し、統計を取るというのが、まぁ、一般的な企業のやり方だろう。


衣食住に関することですら、そういった営業的なものは難しい現在、最も資本主義と相性が悪いと思われる芸術品を売り歩くことの、なんと難しいことか。
思うにそれは、ほとんど不可能事項である。

僕にとって、音楽はやっぱりどこまでいっても”商品”ではない。
たくさんの想いや苦悩が詰まった、そんな結晶でしかない。

作ることに没頭すれば、ときどき人であることすら忘れそうになるぐらい、いつもは隠したいと思っている自分の弱い面や嫌な面が全面に表に出てくる。
人には見せたくない部分ばかりが出てしまう、創作活動の現場での僕はきっと鬼なんだろう。

時間が経ち、年をとればとるほど、その鬼の面は深く色濃く表出してくる。
時間をかけて押さえ込んできた己の弱点が、ここではむき出しになる。

と同時に、もっと高く、もっと広く、より創造的にものを考えたいという欲求も強くなってきている。


優しく生きていきたいと思ってきた。
今もそう思う。
が、どうやら僕の器ではそれは全く不可能のようだ。

優しさと安定を犠牲にして、修羅だか鬼だかと、創造したいとか表現したいとかいう強い熱を手にしている。

二つを手にすることのできない自分はつくづく才能のない人間だと、情けなくなる。


ある時振り返ると僕のそばには誰もいなくなっているのではないかと思うときがある。
今の僕は傍若無人なのではないかと、常々思う。


人を置き去りにし、思いやりに欠け、ただただ一心に道の先だけを見据えて進む。
取り憑かれているんじゃないかと。


活動のお知らせをするためにメールを打つ。

僕は一斉送信なんていう便利は嫌いだ。

一人一人にメールを打つときに、一人一人の顔を思い出す。
”どうしているかな”と思いながら、無精者な僕の長い間の無沙汰を心から反省する。

僕は正しく人と繋がっているだろうか?

そんなことを考えながらみんなにお知らせして、数日、たくさんの人が返信をくれる。


このやり取りが唯一僕を人につなぎ止めてるんだということを、最近はもっぱら思う。

音楽を聴いてほしいというよりは、意外とこのやり取りが好きだったりするし、孤独を忘れられるときでもあるのかもしれない。
誰かのことを思い描くと、心が落ち着く。

この仕事は”自由”ではない。
自分を何らかの役割の中に押し込む必要がある。
何の安定性もない。
何の保証もない。

ステージの上の自分は、完全に武装解除された弱い一人の人間だ。
完全無欠のヒーローなんかではなく、毎日積み重ねてきたものだけを手にして立っている弱き存在である。

言葉が返ってくる。
”いつも気になっています”と。

離れかけた意識が戻ってくる気がする。
しっかり理想を背負って、もう一歩前に進みたい、と。

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