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2011年10月16日 (日)

変身

10/6(木)。
忘れかけた天気はいつも”曇り”ということにしている。


もはや、これは日記の様相を呈しておらず、忘れかけた人生の1ページを記すほどの大きな意味を持っている訳でもない、本格的にだらだらと生きる飲んだくれ音楽家のボケ防止訓練になりつつある。

よって、ライブレポートなんかでもない。

江戸川橋という駅からが一番行きやすいと思われる、”水道カフェ”というところで、果敢にも平日の昼に梯子ノ上デでライブをした。


水道カフェは、ランチ時はカフェ営業をしており美味しいお昼ご飯が出て、夜は”酢飯屋”というイカした寿司屋になる。

僕らは、その真ん中の時間帯、普通なら営業していない仕込み時に演奏をさせてもらった。

お店のうちの半分のスペースはもともと豆腐屋だったらしく、その形状には豆腐や独特のかたちが今も残っている。

残り半分は、こういう下町にふさわしく古い民家をそのまま使ってて、襖が入っていたはずの戸口はきれいにくり抜いてはあるが、その低さは僕がほんとに小さかった頃のおばあちゃんちを思い出させた。
で、これにデールが頭をぶつけることを期待したわけである。
(結局この日、デールは華麗にそれをかわし続けた。)

幅が狭く急な階段もそのまま残してあった。

おばあちゃんちの急な階段で、僕は何度か転げ落ちた。
おそらくそのときに頭を強打したせいで、間違って音楽家になる人生を選んでしまったと思われる。
本来、もっと賢かったに違いない。

増幅されていないアコースティックの演奏が、僕は好きだ。

誤解されないように言っておくと、僕は大爆音の”かっこいい”ロックは間違いなく好きである。
が、最近とんとそんなものに巡り会わない。
その理由は簡単だ。

演奏が胸くそ悪くなるくらいに下手な奴らが多過ぎるからだろう。


だいぶ昔にさかのぼるが、六本木をふらふら歩いているときに、偶然来日中のMEGADETHのギターボーカルのデイヴ・ムステインにあったことがあって、僕は大興奮で声をかけてところ、”今からハードロックカフェでアコースティックライブをやるから見に来れば?”ということでついていったことがある。
なんと彼は、機嫌がよかったのか、僕のことを友達だとかなんだとか言って店にするすると通してくれた。

そのときの演奏は鮮明に覚えている。

MEGADETHの名曲をアコースティックギター1本で次々と歌うデイヴの声は、いつものあれではなく、ほんとに甘い声で、ギターもまるでカントリーのように表情豊かな音だった。

イメージの力が、ときに表現を拡大させ、ときに表現をものすごく狭い檻に閉じ込める。
しかし多くは檻に閉じ込められてしまうのが現代のあり方のように思う。

曲は”哲学”というフィルターを通過して、大から小へ、ジャンルからジャンルへ、本来なら容易くメタモルフォーゼ出来るはずだと、少なくとも僕は信じている。


その日の演奏の良し悪しは、そりゃ調子があるから悪いときだってあるけど、だからこそ良いときがある。

でも、哲学はそんなことのもっと前段階。
つまり”日頃”だ。


梯子ノ上デの演奏をしながら、僕は思っていた。
ここでは僕は自然でいられる、と。


もはや小利に執心する亡者どもとは一緒に演奏できない。

人にウケるなんてのは所詮小さな利益だし、そんなものは哲学にもならない。
だから、それにとらわれれば表現はメタモルフォーゼを生まず、最終的に且つ最悪的に自らの意志で自らの表現を檻に閉じ込める。


僕にとっての大義名分は、”調和”なのだ。

おのれの損得に縛られるような人間は傍には要らない。
”自分は演奏者だ”ということで高をくくる怠惰な人間もいらない。

ちいさなスペースで少ないお客さんでも、表現者の表現と、それを望むお客さんの期待が互いにフィードバックを起こしたとき、一体誰がその場の主人公たり得るのか。
そこにいるもの全てが、その”場”という生き物を形成する歯車になる。
僕らもまたメタモルフォーゼする。


そのときの時間軸に沿って動く表現と、毎日の中で形成される哲学によって生み出される、飽くまでもさりげないものがミックスされてできるもの、これこそ芸術の真価である。

最小にして、それは最大ともなる。


梯子ノ上デはまだまだ小さいながらも、核に”真価”があるとこの頃感じられるようになった。

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