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2011年10月28日 (金)

listen carefully

10/26(水)。


随分と寒くなった。
日頃は吸わないタバコをリハーサルの合間に吸いに外に出ると、寒さで吸う気力が無くなる。


小川くんとのデュオの日だ。

小川くんこと小川晃一は、あるとき偶然ライブハウスで巡り会った唄うたい。
透明度の高いメロディーと詩を、ボコスカと打ち出されるリズムに合わせて(まるで獣に追い立てられるように)歌っているのが印象的で、ついうっかり声をかけたものである。

自信家の一面がある僕は、”これ、絶対僕がバックについた方がいい”と思いながら、去年、ようやくそうなった。

バンド形態をしばらくやったが、小川くん的にしっくりこなかったことが一番の理由で、彼のギターボーカルと僕のドラムのデュオとあいなったわけだ。
ドラムとのデュオというのは多分珍しいと思うのだが、僕自身がドラム奏者だからそんなこと特に気にもとめなかった。

基本、ドラムというとやれドカバキだとか、そうでなければリズミカルなイメージを持つだろうけれでも、平時、エレクトニカやヨーロピアンコンテンポラリーを好んで聴く僕にとっては、むしろリズムばかりを出し続けるドラムの方がなんだか奇妙に思える。

そういうこともあって、小川晃一とはとてもいいタッグを組めるのだろう。


手前味噌な言い方で恥ずかしいけれども、僕はどうも唄うたいから好かれる質の打楽器奏者であるようだ(そんなわけだから、バンドを主体とした、いわゆるバンドのボーカルとは、逆に衝突激突の類が多い)。

この日、下北沢のカラードジャムでの演奏することになっていた。
サウンドチェックのあとに、辛いもの大好きな僕らは、近所の韓国料理屋でスンドゥブを食べた。

唄うたいは激辛に挑戦することなく、僕の方はさらなる高見を目指して大さじ一杯の一味を2度ほど加えた。


ましそよ。

本番はとてもたくさんのお客さんで賑わった。


小川くんと僕の演奏は、極小の音で綴られることが多い。

大切なことは小さな声で語られるべきという信念が僕にはある。

音楽が最も強い力を発するとき、それはダイナミクス的に極小であり、それが持続するときだと僕は考える。


自然な大きな音はリラックスが生むものだが、小さな音というのはそれから考えると明らかに不自然なのだ。
”抑える力”がいる。
この力を得るためにとんでもなく長い時間を僕は要した。


この力を2人で共有し駆使するのは、何ともいえない悦楽の時間なのだ。

2人いるのに、1人以下の音量と音数。
たったそれだけで音楽を成立させる。
そこに僕らのデュオの真価がある。
大きな音でもないのに体の心から熱くなる。

聞き手とパフォーマーが同じレベルで耳を澄ます。
いいコミュニケーションだと思った。


大音量化し、極端にマッシヴな方向に流れていく現在の流行に対して、やはり僕ら表現者はそれを仕方なく受け入れるだけでなく、嫌ならはっきりノーと言わねばならない。
しかもそれは、音楽家なら音楽の力を持ってしてそれをおこなうべきだ。


ただ与えるだけでなく、受け手が考え、補完する、そのスペースをいかにして作るか。
そこまでで一つの作品としてとらえることで、至上のコミュニケーションを生む。

だからスペースさえも作り込む。
完璧だと思って作り込んだものにさえ、いざ本番にはハプニングを起こすべく、再構築にあたる。
時間という要素があるからこそできるパフォーマンス。
それが音楽だろう。


空間を共有する人たちの呼吸さえ聴こえそうな演奏が僕は大好きだ。
だってさ、そのとき僕らが故意に音を出さなくても、全ての音が音楽になるのだから。


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